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Q. マツの種が土壌で育ちにくいのはなぜでしょうか?
都会での生活は、自然とはかけ離れた世界のように思います。しかし、私たちの心のどこかには、「自然に帰りたい、森に帰りたい」という想いが潜んでいるのではないでしょうか?そんな思いを胸に、Green TV(SDGs.TVの前身)スタッフは北海道富良野の森に入ってきました。
時間に追われる生活から少し足を止めてじっくり森を見てみると、そこにはたくさんの生命の息吹が感じられるのです。
今回は、富良野に生まれ、現在森林生物研究所の主宰を務める有澤浩さんに、富良野の森で古代より繰り返され森を形成してきた’倒木更新’について伺いました。有澤さんは北海道の森のシンボル「クマゲラ」の生態についての第一人者としても有名な方です。
さて、皆さんは’倒木更新’という言葉をご存知でしたか?毎年秋になるとたくさんのマツボックリが落ちてきますが、そのマツボックリひとつひとつに、実は150から200個の種潜んでいるのです。しかし、こうした種子が地面に落ちただけでは、芽は出てきません。そこで、重要なのが’倒木更新’なのです。
エゾマツやトドマツは幼少の頃、土壌中の菌類と共生しなければならない仕組みを持っています。その共生関係にある土壌菌の一種が地上では他の菌と競争関係にあるため、十分にはびこることができません。一方、腐った倒木の上では他の雑菌が生育せず、この共生菌が繁殖できる環境があります。しかし、倒れたばかりの木に、種は根付きません。十数年たって初めて、腐った倒木にコケが生え、共生菌が育ち、種が生育する環境が整います。倒木についた種子が成長していく過程で、一本の倒木に苗木は三千~四千本育つといわれています。しかし、この苗木が成長していく中で種間での生存競争が発生し、最終的に倒木の上に整列して育つのは、たったの10本程度の針葉樹です。こうしたサイクルが250年から300年かけて繰り返され、今の森を形成しています。
私たちが普段の生活では、決して目にすることのない’生命のドラマ’が、この北海道の森でみることができます。こうしたドラマは、自然生態系の中で繰り返される奇跡ともいえる現象です。この映像を見て、皆さんにもこうした自然の尊さや美しさを今一度再認識して頂ければ幸いです。
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森に行って倒木更新の様子を観察してみましょう。
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マツは森の中でどのようにして子孫を増やし新しい樹木が育っているのか、動画を見返して整理してみましょう。
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他の樹木は森の中でどのように育つのか調べてみましょう。
(大瀧)