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世界には、貧しさゆえに学校へ行けずに働くことを強いられている子どもたちが大勢います。このような児童労働は、日本で生活していると身近に捉えづらいかもしれません。しかし、例えばチョコレートや綿製品など、私たちが日常的に買っているものが、実は世界のどこかの児童労働に支えられているかもしれないとしたら―。
認定NPO法人ACE(エース、本部:東京都台東区)は、このような児童労働を2025年にゼロにすることを目指して、ガーナのカカオ生産地とインドのコットン生産地で児童労働撲滅につながる教育支援や自立支援活動を行っています。
児童労働をせずに生きていけるために
このうち、ガーナは日本に輸入されるカカオ豆の約8割を占める産地です。ここで、児童労働や人身売買からの子どもの保護や、学校建設、農家への技術支援などを行い、これまでに459人余の子どもたちを児童労働から救済しました。このプロジェクトは、一般の人たちからの寄付に加え、森永製菓のチョコレート製品の売り上げの一部から寄付する「1チョコfor 1スマイル」や、ショコラティエ・三枝俊介氏プロデュースの、プロジェクトを実施した村でとれたカカオを使ったガーナスマイルカカオボンボンの売り上げからの寄付も活用されており、企業と連携し、生産者・消費者が解決に参画できるのが特徴です。
ガーナ支援地の学校で授業の様子を見守るACEの白木事務局長
また、インドのコットン生産地では、義務教育年齢を過ぎた女子が通える職業訓練センターの運営や、コットン農家に副収入の確保に向けた起業支援を行うなど、児童労働に頼らない形での経済的自立につなげる取り組みを行っています。これにより、これまでに536人の児童労働者を救出しました。ガーナ、インドそれぞれでACEがこれまで実施してきたプロジェクトで教育環境を改善できた子どもたちは、1万3,263人に上ります。
足元にもある「児童労働」に着目
ACEは1997年の設立以来、児童労働問題に取り組み、2012年には「2022年までに児童労働を世界の子どもたちの10人に1人にまで減らす」という長期ビジョンを掲げました。2015年にSDGsが発表されたのを受けて、目標8「働きがいも経済成長も」の7項に記載された「2025年までに児童労働をゼロにする」に合わせて長期目標を変更。ACEの事業としてはこのほかにも、目標1(貧困)、目標2(小規模農家のエンパワメント)、目標4(教育)目標12(持続可能な生産と消費)や目標5(ジェンダー平等)、目標16-2(子どもへの暴力根絶)目標17(企業とのパートナーシップ)にも深く関係しています。
SDGsは、発展途上国だけでなく、先進国も目標達成に向けて取り組むべきとされるユニバーサル(普遍的)という特徴があります。つまり、日本でも児童労働があるとすればそれをゼロにしなければならない。こうした問題意識から、ACEではこのほど、日本の児童労働の現状把握のための調査も始めました。
日本でも、労働が禁じられている15歳未満で、小学生が性産業で働いていたり、中学生が建設現場で事故死したりという例があります。また、労働可能な16歳以上でも、労働条件の悪いブラックバイトの問題などが指摘されています。適切な労働環境と適正な賃金が保障された仕事(ディーセントワーク)を日本でもつくっていくために、ACEではこの調査事業をきっかけに、日本の子ども・若者へのアプローチも展開していく予定です。
ACE代表の岩附由香さんは「SDGsが打ち出されたことで、自分たちは何ができるか考える契機になった」と振り返ります。その上で、「児童労働は数として減っているので、もっともっと減らすことができます。現地の子どもたちの教育機会の拡大や、ビジネス界との協働を通じて、児童労働のないエコシステム(生態系)を構築していきたい」と話してくれました。
参照:
1チョコfor 1スマイル(認定NPO法人ACE)
ガーナスマイルカカオボンボン(ショコラティエ パレ ド オール)