Contents navigation
SDGsの目標1である「貧困をなくそう」は、日本にとってはあまり関係のないテーマだと思っていませんか?しかし、子どもの貧困問題がクローズアップされるなど、日本にも貧困は静かに広がりつつあります。
中でも、貧困によって食事を我慢しなければならないとすれば、それは命にかかわる重大なこと。にもかかわらず、日本には貧困に陥っている人たちが無償で食料を得られる仕組みが確立されていません。その一方で、日本では年間約600万トンもの食料が廃棄され、その大半はたとえまだ食用として十分に使える状態のものであっても、私たちの口には入ることなくリサイクル(飼料化やエネルギー転換)されています。
こうした状況を打開しようと、NPO法人セカンドハーベストジャパンでは、「食のセーフティーネット」(お金がなくても誰でも必要な食料を手に入れられる仕組み)を構築するため、フードバンク活動を首都圏を中心に展開しています。その動きは今、全国各地の各団体による同様の活動として広がってきています。
少子高齢化の進展で社会が不確実性を増す中、貧困は今の自分の生活には幸い関係がないとしても、「明日は我が身」かもしれません。たとえ自分自身が貧困に陥らなくても、身近な人がそのような境遇にならないとも限りません。そんな時のために、食のセーフティーネットとは何か、どのようにアクセスできるのか、どうすれば食のセーフティーネットづくりに自分も貢献できるのかを知っていただくために、ぜひご覧いただきたい動画です。
田中 入馬 氏
(NPO法人セカンドハーベスト・ジャパン マネージャー<政策提言と発展>)
東京都出身。サセックス大学大学院修了(社会開発学)。 国内において生活困窮者による仕事おこしを行う企業組合法人にて勤めたのち、東日本大震災をきっかけに国際NGOで勤務。2015年より、現職とフードバンク全国ネットワークの事務局長を兼務し、余剰食品を活用した生活困窮者支援のあり方を探っている。
2000年に、国連は2015年までに貧困をなくすことを目指してMDGs(ミレニアム開発目標)を採択しました。各国の取り組みの成果もあり、全世界で極度の貧困状態にある人々の数は、1990年の半分以下に減少しましたが、現在も約8億3,600万人、開発途上国の5人に一人が、1日あたりおよそ1ドル25セントに満たない生活費で暮らす、極度の貧困状態に置かれています。
このような貧しい状況に置かれては、人が人間らしく、尊厳を持って生きることなどできません。
「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、世界から貧困をなくすことを最重要の目標として掲げています。その中では、「誰も置き去りにしない」という強い理念が打ち出されています。
豊かさを求めて展開されるはずの経済活動が、一部の人々に富や繁栄をもたらす一方で、恩恵から取り残される人々を生み続けてきました。このようなグローバル経済システムや社会構造に対する不満が、時に過激思想や排他主義に結びつき、テロや紛争、資源の奪い合いを招いています。
国際的な秩序を乱すこうした現象が表面化する時、その根本にはおしなべて貧困問題が横たわっている。国際的な安定の上に持続可能な開発を実現するには、まず何よりも貧困問題に世界をあげて取り組む必要があるのです。
2030年までに極度に貧しい人たちをなくすために、私たちはどのような社会保障制度を用意し、誰もが機会を手にすることができる環境を整えていけばいいでしょうか。
インドやバングラデシュといった開発途上国では、貧しい人たちが事業を起こし、自立することを支える「マイクロファイナンス」といった金融サービスが、注目されています。女性が教育を受けて、職業に就いて収入を得られるようになることも、大きな力となるでしょう。
貧しい状況にある人たちが、人生に希望を持って生きられるようにするために、私たちはあらゆる叡智を結集して取り組むべき時を迎えているのです。